この二つの中へ雑るとき、彼はただ、何といふこともなく確かに雑るといふ実感がして、深く身体の溶け消えてゆく状態を意識することが出来るのであつた。
日頃負ふてゐる重荷をも路傍へ落し忘れて、静かにそして百方へ撒かれてゆく軽快なリズムを、耳を澄ませば一種じんじんと冴えわたる幽かな音響に、聴き分けることも出来るのであつた。
彼は元来脆弱な体質で、山に攀挙することの苦痛は並大抵なものではなかつた。
この二つの中へ雑るとき、彼はただ、何といふこともなく確かに雑るといふ実感がして、深く身体の溶け消えてゆく状態を意識することが出来るのであつた。
日頃負ふてゐる重荷をも路傍へ落し忘れて、静かにそして百方へ撒かれてゆく軽快なリズムを、耳を澄ませば一種じんじんと冴えわたる幽かな音響に、聴き分けることも出来るのであつた。
彼は元来脆弱な体質で、山に攀挙することの苦痛は並大抵なものではなかつた。