しかし其の年、凡太は次々に起る不愉快な出来事に齲まれて自棄まぢりの重苦しさを負担してゐたから、東京にゐて憂鬱の尾を噛みしめるよりはまだしもましであらうと考へ、リュックサックを背にして夜汽車に乗り込んでみたが、重荷は汽車の速力に順つて深くなるやうにしか思はれなかつた。
翌朝山間の小駅に下車して、ぽろぽろと零れた十人ばかりの人々と屋根もないプラットフオムに取り残されてみると、思ひがけない龍然の姿が出迎へに出てゐた。
彼は草鞋を履き、裃のやうな古めかしい背広服に顔色の悪い丸顔を載せて、零れた人々を一人づつ甜めるやうな格巧をしながら、よろよろと彼を探し廻つてゐた。