肋骨や手足の関節が目立つて目に泌みるその不健康な裸体を見てゐると、まるで痩衰へた河鹿が岩にしみついてゐるやうにしか思へないのであつた。
魂などといふものは勿論、およそ「生きてゐる」といふ何等かの証拠を、まつたく何処にも見出すことの出来ない残骸といふ気がした。
凡太は睡る気持にもならなかつたので、それから龍然が目を醒ますまでの三時間ばかりといふもの、変に淋しい自棄な気持になつて、水へがぼがぼ潜つてみたり、ふと気がついて頭をあげると谷の枝枝に鳴りわたる風音が耳についてきたり、上の藪を這つてゆく縞蛇に出会つたりした。