凡太は睡る気持にもならなかつたので、それから龍然が目を醒ますまでの三時間ばかりといふもの、変に淋しい自棄な気持になつて、水へがぼがぼ潜つてみたり、ふと気がついて頭をあげると谷の枝枝に鳴りわたる風音が耳についてきたり、上の藪を這つてゆく縞蛇に出会つたりした。
二人が黒谷村の峠まで辿りついたとき、もう黄昏も深かつた。
熊笹の中から頸だけを延して顧れば、今来た路は幾重もの山波となつて、濃い紫にとつぷりと溶けてゆくのが見えた。
凡太は睡る気持にもならなかつたので、それから龍然が目を醒ますまでの三時間ばかりといふもの、変に淋しい自棄な気持になつて、水へがぼがぼ潜つてみたり、ふと気がついて頭をあげると谷の枝枝に鳴りわたる風音が耳についてきたり、上の藪を這つてゆく縞蛇に出会つたりした。
二人が黒谷村の峠まで辿りついたとき、もう黄昏も深かつた。
熊笹の中から頸だけを延して顧れば、今来た路は幾重もの山波となつて、濃い紫にとつぷりと溶けてゆくのが見えた。