熊笹の中から頸だけを延して顧れば、今来た路は幾重もの山波となつて、濃い紫にとつぷりと溶けてゆくのが見えた。
山に遠く蜩の沈む音をききながら峠を降ると、路は今迄とはまるで別な平凡な風景に変つてきた。
山といふ山はみな段々の水田に切りひらかれて、その山嶺まで稲の穂が、昼ならば青々と見えるであらう波を蕭条と戦がせてゐた。
熊笹の中から頸だけを延して顧れば、今来た路は幾重もの山波となつて、濃い紫にとつぷりと溶けてゆくのが見えた。
山に遠く蜩の沈む音をききながら峠を降ると、路は今迄とはまるで別な平凡な風景に変つてきた。
山といふ山はみな段々の水田に切りひらかれて、その山嶺まで稲の穂が、昼ならば青々と見えるであらう波を蕭条と戦がせてゐた。