遠くから又遠い奥へ鳴り続いてゐる谷川のせせらぎを越して、いきなり空へ攀ぢてゐる山山の逞ましい沈黙が、頭上一杯に圧しつけて酒と一緒に深く滲みてくるのだつた。
龍然は不思議に酒に強く、凡太に比較して殆んど酔を表はさなかつたが、時たま思ひ出したやうに、ひどく器用に居酒屋の女中を揶揄つたりした。
それがその瞬間には板についてゐて、驚くと、度胆を抜かれた瞬間には、もうもとの妙に取り澄してゐる彼の風貌が、それはそれなりに龍然そのものであつた。
遠くから又遠い奥へ鳴り続いてゐる谷川のせせらぎを越して、いきなり空へ攀ぢてゐる山山の逞ましい沈黙が、頭上一杯に圧しつけて酒と一緒に深く滲みてくるのだつた。
龍然は不思議に酒に強く、凡太に比較して殆んど酔を表はさなかつたが、時たま思ひ出したやうに、ひどく器用に居酒屋の女中を揶揄つたりした。
それがその瞬間には板についてゐて、驚くと、度胆を抜かれた瞬間には、もうもとの妙に取り澄してゐる彼の風貌が、それはそれなりに龍然そのものであつた。