蛸は真面目であつたから、暫くの後やうやく燈りを受けてゐることに気づいて、ひどく恥ぢらつて赤らみながら顔を背けてむつとしたが、和尚は喫驚してモヂモヂと立ち去ることを忘れてゐたものだから、蛸はぷんと拗て軽蔑を顔に顕はし、食へ、といふやうに一本の見事な足を和尚の鼻先へぬつと突き延した。
和尚は大いに狼狽して、そそくさと小腰をかがめ、命ぜられる通りこれを切り取つてうろたへながら本堂へ戻りついたが、とにかく変てこな気持と共に之をモクモク呑み込んでしまつた。
その翌日から和尚は全く発狂して、やたらと女をペロペロ甜めたがり乍ら、間もなく黄泉の客となつた。