凡太は愕然として振り返ると、本堂の丸柱と並んで、大柄な女が一人うつすらと立ちはだかつてゐた。
凡太はあまり不思議なことなので……いや、不思議とはいふもののこれは情景の説明ではない、凡太の意識内容の説明であるが、この突瑳の瞬間に、彼はしばらく気抜けのやうな驚愕を味得して、呆然としたままその思惟を一時に中絶してしまつた。
元来、これは必ずしも定則ではないけれども、凡太は屡孤独に耽つてゐる折、突然人像の出現に脅やかされるとき、現前に転来した事実とはまるで別な一種不可解な無音無色の世界へ踏み迷ふことがあつた。