瞬時にその夏も亦暮れる、そして生活も暮れてしまふ、蒼い空の在ることをさへ忘れつくして、湿つた藁屋根の下に村人たちが呟くであらう嗄れた溜息が、明るい夏空の裏側に透明な波動となつて見え透いてゐる。
黄昏に似た慌ただしさで暮れてゆく一瞬の夏に追ひ縋つて、あの蝉の音に近い狂燥を村の人達は金比羅山に踊るのであつた。
同じ気候の染を負ふて、鈴蘭の咲くころ、乙女達が手を執りながら青い草原に踊る北欧のライゲンは、凡太の古来最も共鳴を感ずる一情景で、凡太は彼自身の心細い生存を、このやうに甘美な狂燥と共に空へ撒きすてて死滅へまでの連鎖を辿りたいと、日頃念願して止まなかつた。