見てゐると、二人は何事かひそひそ相談してゐたが、やがて女衒はまだその方をぼんやり見つめてゐる凡太の姿に気づいて、遠くから会釈した。
凡太はひどく狼狽してそそくさ会釈を返したが、気まづくなつたので、一人ぽくぽくと又一度かなり大きい円陣を、時々立ち止つては中の踊りを覗き込みながら歩いた。
それから、思ひ切つて金比羅山を振り棄てると、いま登つてきた坂道をすたすたと黒い黒い塊の中へ速足で下りはぢめたが、自然の加速度で猛烈な速力となり麓までは夢のうちに降りたまま、麓でも止まることが出来ずに次の坂道へ十歩ほど余勢で駈けてほつと止つた。