喧嘩をしてやるから――」と、凡太は憤然叫び出したい勃勃たる好戦意識を燃したが、やうやくそれを噛み殺して、一とまづ考へ直した。
しからば女中を張つて鞘当をしてやらうかと、無性に癪にさわり出してつまらぬ空想をめぐらしはぢめたが、勿論張りがひのある女ではないから、一晩中女衒と交代に女を抱くとしたならば、蓋し一代の恥辱であると痛感して、憤然居酒屋を立ち去ることに決心した。
老婆と女中は驚いて、「旦那が先客でありますぞい、おとまりなさいまし」とすすめたが、決心止みがたいこと磐石の及ばざる面影を見出したので、「又だうぞ」と言ひながら奥から提灯を持ち出してきて無理に凡太に持たせた。