凡太は一体龍然の学識には相当の敬意を払つてゐたのだつた。
それは彼が初めてこの寺へ第一歩を踏み入れた夜のこと、龍然はその書院にかなり堆く積まれた書籍を隠すやうにしながら、「売り払ふ古本屋も山の中には無いので……」と恥ぢた顔付をした。
凡太の経験に由れば、書籍を所有することに心から恥を持つ人は、おほむね勝れた学識を持つ人達であつたから、龍然の学識に対しても、忽ちこの時から敬意を払ふことにして、別にそれ以来議論を交したこともないから、そのままその時の敬意を払ひつづけてゐたのだつた。
凡太は一体龍然の学識には相当の敬意を払つてゐたのだつた。
それは彼が初めてこの寺へ第一歩を踏み入れた夜のこと、龍然はその書院にかなり堆く積まれた書籍を隠すやうにしながら、「売り払ふ古本屋も山の中には無いので……」と恥ぢた顔付をした。
凡太の経験に由れば、書籍を所有することに心から恥を持つ人は、おほむね勝れた学識を持つ人達であつたから、龍然の学識に対しても、忽ちこの時から敬意を払ふことにして、別にそれ以来議論を交したこともないから、そのままその時の敬意を払ひつづけてゐたのだつた。