凡太が歩み寄つて龍然の肩をたたくと、別にそれに報ひやうとする顔付もせず、二人肩を並べて黙々と書院へ歩き出したが、敷居を股ぐ時、龍然は鼻を鴨居へ押しつけるばかりにして、あはあはあは……と笑ひ出した。
凡太はすつかり毒気を抜かれて、今のは芝居だつたのかい、と訊いてみるのも莫迦らしい程がつかりした気落ちがしたので、いささか胆の白くなる驚嘆を味はひながら、一体この坊主は莫迦なのか悧巧なのか手に負へない怪物だと考へた。
其の後、もう来ないのかと思つてゐた女は、相変らず毎夜龍然を訪れて来た。
凡太が歩み寄つて龍然の肩をたたくと、別にそれに報ひやうとする顔付もせず、二人肩を並べて黙々と書院へ歩き出したが、敷居を股ぐ時、龍然は鼻を鴨居へ押しつけるばかりにして、あはあはあは……と笑ひ出した。
凡太はすつかり毒気を抜かれて、今のは芝居だつたのかい、と訊いてみるのも莫迦らしい程がつかりした気落ちがしたので、いささか胆の白くなる驚嘆を味はひながら、一体この坊主は莫迦なのか悧巧なのか手に負へない怪物だと考へた。
其の後、もう来ないのかと思つてゐた女は、相変らず毎夜龍然を訪れて来た。