もう九月に這入つた一日、凡太はいよいよ出立した。
その未明、まだ明け切らぬ黒谷村の、人気ない白い街道を、龍然と二人肩を並べて一言も物を言はずに通過してしまつた。
谷間からどす黒い靄が湧きあげて、近い山さへまるで視界には映らない、そして、蜩の音が遠い森から朝の澱みを震はして泌みる頃、丁度朝の目醒めを迎へたであらう黒谷村は、振り返つても、もはや下には見えなかつた。
もう九月に這入つた一日、凡太はいよいよ出立した。
その未明、まだ明け切らぬ黒谷村の、人気ない白い街道を、龍然と二人肩を並べて一言も物を言はずに通過してしまつた。
谷間からどす黒い靄が湧きあげて、近い山さへまるで視界には映らない、そして、蜩の音が遠い森から朝の澱みを震はして泌みる頃、丁度朝の目醒めを迎へたであらう黒谷村は、振り返つても、もはや下には見えなかつた。