さようなら。
そして由良は泣きながら堅く窓にかぢりついて、激しく手巾をふつてゐたが、凡太も亦、彼はデッキのステップに身を出して龍然に目礼を送りながら、目に光るものの溢れ出るのを、どうすることも出来なかつた。
もはや列車はするすると、屋根もない短いプラットフオムを走り出やうとしてゐた、人気ないプラットフオムにただ一人超然として、全ての感情から独立した人のやうに開いた両股をがつしり踏みしめて汽車を見送つてゐた龍然は、已に明るい太陽の下に一つ取り残されて小さく凋んでゆくやうに見られたが、突然みにくく顔を歪めたやうに想像されると、小腰をかがめ、両手の掌にがつしりと顔を覆ひ、恐らくは劇しい叫喚をあげながら、倒れるやうに泣き伏した姿が見えた――