僕も僕の湿り気を薄く真つ白い霧にして、静かに沖へ吐き出してしまふと、黴れた古い「昔」だけが、襤褸のやうにヒラヒラと、広い海風に戯れながら僕の顳顬に張り付いて残つた。
「昔」を負うて孤独の路を喘いでゐる僕は乾涸らびた朽木のやうな侘びしさに溺れてしまふ。
顳顬に凍てついた古い昔の襤褸をほぐす、丁度あのノウノウとした反芻動物のやうに、僕はウラウラとした海岸のベンチや、たまさかに翳りの深い樹の下で、一つづつ食べ直すものの如くに襤褸をほぐすのが日課であつた。
僕も僕の湿り気を薄く真つ白い霧にして、静かに沖へ吐き出してしまふと、黴れた古い「昔」だけが、襤褸のやうにヒラヒラと、広い海風に戯れながら僕の顳顬に張り付いて残つた。
「昔」を負うて孤独の路を喘いでゐる僕は乾涸らびた朽木のやうな侘びしさに溺れてしまふ。
顳顬に凍てついた古い昔の襤褸をほぐす、丁度あのノウノウとした反芻動物のやうに、僕はウラウラとした海岸のベンチや、たまさかに翳りの深い樹の下で、一つづつ食べ直すものの如くに襤褸をほぐすのが日課であつた。