そして若し、ある日僕が愚かにも「僕は死を怖れない」と述べたなら、お前は窓へ顔を背けて、潤んだ夜空に尖つた唇を隠しながら、堪へがたい可笑しさを紛らすやうに肩をゆすぶり、劇しい軽蔑を後姿に表はすであらう、恰も僕が濁つた夜の退屈に、ふと思ひ出して、「僕はお前を愛してゐない」と言ふ時のやうに。
お前の時間と、お前の気持が許しさへすれば、僕は毎日の幾時間をお前と居ても困ることは無かつたのだ。
僕は何物にも溶けて紛れるヤクザな外皮を持つてゐた、そして又何物にも溶けやうとしない、一つの頑なな、沈殿物に悩まされてゐた。