も一つの隅に、そこまでは船を追うて来た僅かばかりの人群れが、突端の石に爪先を立てて、尚それからも暫くは高々と手を振つてゐるが、やがてガッカリ肩を落して、一塊づつ散つてしまふ、一人立ち去るその度に、広い海に囲まれて白々と鈍く輝やく岩壁の背がまるで零れた汚点を抜くやう、遠い海風に吹き渡られて妙に侘しく漂白されるが、たうとう誰も見えなくなつた。
「アアアアア……」
僕達は、やうやくホッと息をして、表情の死んだ、板のやうな顔を見合はす、その顔を、二人は直ぐに逸らし合ふ、逸らす目の緩く流れた抛物線には、縹渺とした海の遠さが薄く一杯。