と昆虫の羽唸りに似た鈍い音を夜空に残し睡つた街上に白い真空の一文字を引いたかと思ふと、僕の胸倉へ発止とばかりに躍りかかつて――博士は稀に見る小男であつたから、僕の頸に左手を巻き僕の腿に両脚を絡みつけて、丁度木立にしがみついた蝉の恰好になるのだが――右手でギュッと僕の鼻先を撮みあげると渾身の力を奮ひ集めてグリグリぐりぐりと捩ぢ廻したのであつた。
ヤッ!
掛声諸共博士は遂ひに僕を道路へ捻り倒し、クシャクシャに僕を踏み潰して、全く其の場へのしちまふと、いい心持にシルクハットを深く阿弥陀に被り直して「エヘヘン!