あまつさへ様々な「不幸」が、まるで僕一人を彼等の犠牲者として目星をつけたかのやうに群をなして押寄せてきた。
自動車に跳ね飛ばされて頭を石畳に打ちつけるとか、河を跳び越す途端に確かに河幅が一米ばかりグーと延びて僕を水中へ逆立ちさせてしまふとか……凡そ意地悪るな「不幸」が丁度一種の妖気のやうに靄をなして僕の身辺を漂ひ、僕の隙を窺ひ乍ら得意げに僕の鼻先で踊りを踊つたり欠伸をしたりしてゐるのが光線の具合でチャンと見えて了ふのだ。
僕は彼等に乗ずる隙を見せないために堅く一室に閉ぢ籠り、無論学校も休んで、その頃丁度二ヶ月ばかりといふものは頑固に外出を拒んでゐた。