そして僕が僕の身辺に垂れこめてゐる怪しげな妖気に就てつぶさに辛酸の由来を語ると、博士は又、自分は最近讃嘆すべき麗人と結婚したのであるが、その麗人はまだ至つて少女であるために自分を激しく愛撫することを知るのみで神経衰弱に対しての理解に乏しいから、自分の神経衰弱は結局、永遠に癒る時はあるまいと語り、悩ましげに溜息を吐いてゐたが、又突然深い満足の微笑をニタリニタリと合点々々頷き乍ら洩したのであつた。
そして、僕は其の時ハッ!
と衷心より博士は気の毒な人であると思ひ、この人を倖せにするためになら此の上さらに僕の神経衰弱を深めることも厭はないであらうと思ひ当つて、ヂッと一本の指を噛み乍ら太い溜息を洩したりして真剣に知恵を運らし初めたのであつた。