広漠として殆んど涯も知れないその森の入口に一軒の酒場が立てられてゐた。
森の入口はと言へば此は又広茫としたなだらかな草原で、見渡したところ八方に人々の棲む何の気配もないのだが、大いなる落日が森の奥へ消え落ちて東の平野から広い夜が這ひ上つてくると、急にフワフワと何処から現れるものともつかず実に可笑しな奴ばかりが森の酒場へ集つてくるのだ。
煙草をふかし乍ら勿体ぶつて考へてばかりゐる三文詩人がゐるかと思ふと、見てゐたらいきなり彼の二つの耳から白くモクモクと煙を吹き出し嵐のやうな劇しい思索に耽りはぢめたのであつた!