――(言葉で表はせば其のやうな物にもなるが実際は、其れに似通つた多少の感が僅かに漂ふ気配の如くに心に覚えられたと言ふだけである――)雨の日は又恰好な休息場所として停車場のベンチがあつた。
其処では、慌ただしげに出入する老若の人人が、晴れたる日とは趣きの違ふ心構へで呟きを残し染を落して変転し、空虚なる人の心を慰めもし紛らせもする。
そのくせ、さういふ愉しさも予想でき、又其処へ行きさへすれば予想の通り実際愉しく此の一日が暮せるのだと分つてゐても、無理にも其処へ行きたいといふ頑固な意欲がうるさくて、遂ひドシャ降りではあるけれど足が他処へ向いてしまふ。