駄夫はてれてニヤニヤし乍ら、ついでのことに乞食の真似も止しちまはうかと考へたが、ええマヤよ、どうにでもなれ……廻れ右して寺の境内へ、風を喰つて飛び込んでしまつた。
慌ててゐたので入口を探し出すのに骨が折れたが、植込の陰にそれらしい物を見掛けると、案外何の躊躇もなく臆面もなく重い格子戸をガタガタ開けて案内を乞うた。
厭に胡散な暗闇が奥の方から蠢いてきて耳の辺りへ絡まりつくが、駄夫はフウフウそれを吹いたり深く吸ひ込むやうにしたり、それからジンと耳を澄まして、奥の気配と自分の動悸と二つ一緒に感じ初めた。