駄夫はボンヤリ彷徨ひ出でて重い格子戸を閉すと、山門からは立ち去らずに裏手の墓地へ廻つて行つた。
――古い昔の友達であるとか、尤もらしく自分の姓名だとか、殆んど無意識に出まかせに而かも極めて自然のうちに述べ立てて来たが、其処を出て墓地を彷徨う今も尚ほそれが極めて自然なものに思ひ浮んで来るばかりである、可笑しくもなく変でもなかつた。
ただ妙に嫋嫋として和やかな、まるで一色の闇のやうに潤んだものが彼をトップリ包んでゐた。
駄夫はボンヤリ彷徨ひ出でて重い格子戸を閉すと、山門からは立ち去らずに裏手の墓地へ廻つて行つた。
――古い昔の友達であるとか、尤もらしく自分の姓名だとか、殆んど無意識に出まかせに而かも極めて自然のうちに述べ立てて来たが、其処を出て墓地を彷徨う今も尚ほそれが極めて自然なものに思ひ浮んで来るばかりである、可笑しくもなく変でもなかつた。
ただ妙に嫋嫋として和やかな、まるで一色の闇のやうに潤んだものが彼をトップリ包んでゐた。