繁吹をあげてザザザザーッ……と頭を揺すぶる竹藪の音が、激浪のやうに荒れ狂ふ裏手一帯の劇しい起伏を未だ一杯に温気の籠めた朝の部屋に歴々と描き出して見せてしまふ、かと思ふと、突然硝子を射抜くやうな太く真つ直な雨脚がヂヂヂヂヂイーと一頻り窓に噛みつくのであつた。
すると又あたりは急にホッとして、ずうつと遠い向うの林や藁屋根の上を激しく叩いて渡つて行く遠い雨脚の音が聴えた。
――さう言へば、今朝方も未明の事であつたらう、ふと目を覚した極めて僅かな瞬間のうちに激しい嵐の唸り声を――それは遥かに武蔵野を遠く縹渺と吹き捲るもののやうに聴きとれたが――とりとめもない唯それだけの険しい唸りを、二重にも亦三重にもボンヤリとして殆んど夢心に近いであらう朧げな耳に残したやうな記憶があつた。