それは破れて、肱や衣嚢は綴布だらけであつた。
春の外套を持たぬのだ、勿論それが第一の理由であらう、しかし又、与里はここ数日以来激しい発熱を訴へて乾いた唇を噛んでゐたから、この種の重い冬の衣裳が、高い悪熱に要求せられた結果でないと言ひ切ることも出来はしない。
――何といふ寒々とした薄い影!
それは破れて、肱や衣嚢は綴布だらけであつた。
春の外套を持たぬのだ、勿論それが第一の理由であらう、しかし又、与里はここ数日以来激しい発熱を訴へて乾いた唇を噛んでゐたから、この種の重い冬の衣裳が、高い悪熱に要求せられた結果でないと言ひ切ることも出来はしない。
――何といふ寒々とした薄い影!