鼻のあたりへヂッと擡げて嗅ぐともなく見るともなしに見たり嗅いだりしてゐたら、激しい嵐の一うねりが今しがた引いたばかりの空虚の中に、まだ引き残りのケチな小癪な突風が小雨を殴り小枝を叩いて間の抜けたフォッと明るい往来の上でシミッタレな小騒ぎをたててゐた。
――ふと気が付いたら、階下からは相も変らず物音一つ聴えてこない。
駄夫はソッと窓掛を手離して再び寝床へ帰着すると、忽ちグッタリ仰向けに寝倒れたまま空洞な眼を閉ぢもしないで、次から次、次から次へと取り止めもない物の像を額へ運んだ、全く何等の意識もなしに。