その時、朝の挨拶も確かに答へたものらしい、だがそれも殆んど幽かな呟きで、音には聴えずに気配だけが感ぜられた。
裏の戸口をガタガタ開けて嵐の吹きすさぶ井戸端へ出るまで――駄夫の通過ぎた部屋はと言へば、それが即ちこの家全体の間数を縦断したわけで、階段を降りた場所が不思議に明るい三畳の間、その隣りには与里の老母が有るか無きかに凭れてゐる朦朧とした六畳の部屋、そしてそれだけが全部であつた。
さう言へば、二階では何のことも無かつたが、来てみれば階下はひどい雨漏りである。
その時、朝の挨拶も確かに答へたものらしい、だがそれも殆んど幽かな呟きで、音には聴えずに気配だけが感ぜられた。
裏の戸口をガタガタ開けて嵐の吹きすさぶ井戸端へ出るまで――駄夫の通過ぎた部屋はと言へば、それが即ちこの家全体の間数を縦断したわけで、階段を降りた場所が不思議に明るい三畳の間、その隣りには与里の老母が有るか無きかに凭れてゐる朦朧とした六畳の部屋、そしてそれだけが全部であつた。
さう言へば、二階では何のことも無かつたが、来てみれば階下はひどい雨漏りである。