暫くヂッと黙つたまま項垂れがちに何かと指先をクネクネと爪繰らせてゐたが、まるでテリヤ種の犬かのやうに、急にピタリと張り切つた顔を擡げてゐた。
なにか咄嗟な神経に弾かれでもしたやうに、そして又、長い夢からふと目を醒した人のやうにとぼけた顔にも見えたのである。
すると坐つた形のまま緩やかに方向を変へ、腰を折り両手を下ろし、雨漏りのする敷居の方へ延びて行くやうに躄りはじめたが――其処まで行けばわけないものを、三尺も手前の場所に動きを止めて、ガナガナと顫へる腕をやうやくに畳とすれすれに延しきり、辛うじて新聞紙に届かせることが出来たら、少しづつ滑らすやうに動かして、兎に角に紙の位置を一尺あまり動かすことが出来た。