そのくせ「ねえ、モミハラさん――」だとか「さうですわねえ、ダフさん――」だとか、厭に馴れ馴れしく押付けがましく切り込んできて、まるで駄夫を一味同腹の徒党なみに扱ひながら、憎々しげに、与里や総江の陰口ばかり叩くのである。
駄夫も甚だうるさいから「うんうん」といい加減に頷いたり――頷いてばかりゐるうちには、何んだか自分まで莫迦にされてゐるやうで癪にさはつて堪まらなくなるから、そつぽを向いて欠伸をしたりするのだが――するうちに又、頸筋のあたりに絡んでくる老婦人の粘りつこい罵言が、ひどく冷笑的にネチネチときこえてくるので、根こそげ厭らしく思はれてしまふのだ。
この人の神経にこちらの神経を絡ませたら、もう抜き差しの出来ないことを駄夫は百も承知してゐた。