さて、街の方角へ振り返つて(その方向も亦暗澹として薄暗い――)径のまつすぐ向うの奥を遥かに望み、兎も角も歩き出したら――激しい風に送られて、まだあの癇高い絶叫が嵐の唸りに吹き千切られ、きれぎれに聴きとれてきた。
「DAF・DAF・DAFの馬鹿、DAFの馬鹿……」と。
そしてどうやら、今度は五歳の多次郎までが、二階の窓から首を突き出し、総江の裾に絡まりながら、母を真似て一緒に怒鳴つてゐるやうである。
さて、街の方角へ振り返つて(その方向も亦暗澹として薄暗い――)径のまつすぐ向うの奥を遥かに望み、兎も角も歩き出したら――激しい風に送られて、まだあの癇高い絶叫が嵐の唸りに吹き千切られ、きれぎれに聴きとれてきた。
「DAF・DAF・DAFの馬鹿、DAFの馬鹿……」と。
そしてどうやら、今度は五歳の多次郎までが、二階の窓から首を突き出し、総江の裾に絡まりながら、母を真似て一緒に怒鳴つてゐるやうである。