「ああ、スッカリ信頼するよ――」
と、明るい、道化た、悄げた様子をして言ひきると、総江は急に、張りつめた気が抜けたやうにアハハアハハと笑ひ出したが、流石にすぐと少してれて肩を落し、今度はシャンとして変にシンミリと、シミジミと前方を打ち眺めて、安らかに息をしてゐる。
いい気なもので、駄夫を慈愛する母のやうな形でもあり、笑止千万なものではあるが――駄夫は別段笑ひたくもなかつたし――それに駄夫は、人間の斯る甘さに特別の好感を持つ男だから(――そしてそれ故人間が好きでもあるから)彼も亦いい気になつて、かかる機会に、かかる沈黙に迫まられたことをいいことにして、ヂッと瞑目を逞うした。