さうかうする中に、幾つも幾つも入り乱れた跫音が突然間近かに湧き起つたかと思ふと、忽ち低い話声もガヤガヤ聴きとれてきて、急に入口の戸が開け放たれたが――するともはや陽気なぞめきが戸の内側に舞ひ込んでゐた。
「ただいま――」といふのは聞き馴れない跳ねるやうな男の声で、続いて矢張り耳に馴れない若い女の声がした。
履物を脱ぐ乱れた音がしたかと思ふと、先登に現れたのは小柄な男で、無論それは玄也であらう、現れるなりいきなり一座へ先づ一瞥を投げるといふ、斯る種類の人間とみえる――前こごみにヒョイと明るみへ出たと思ふと直ぐさま駄夫をみとめて――(駄夫の噂は已にきいてゐたのであらう)