何か白らけた出来事があつて与里と総江は気重い無言を固執してゐたものとみえ、空々しい薄暗がりが其処ら一杯にはびこつてをり、与里の寝顔は激しい空虚に殆んど間抜けなものに見えた。
駄夫の姿を認めると与里は忽ちホッとして救はれたやうに活気づいたが、力の無さは詮方もなく寝床の上へ首だけを擡げて「昨夜は迷惑をかけて済まなかつたね」とか「今朝もまだ八度あまりの熱があつてフラフラして――」なぞと、痩せくたびれた頬から頤を吊しあげるやうにして無理に笑顔をつくらうとしてゐる。
すると総江は台所から突慳貪な声を絞つて駄夫に呼びかけ