それは恰も少年が巷に受けた重い侮辱に興奮して、唯一の慰撫を彼等の母に甘えるあまり、母に向つて怒りを放つ幼い感情に似て見えた。
(そして瞿曇は斯るとき怒りの底に宝石のごとく悔ひと悲しみを深め養ふものである――)総江は殆んど訝かしげに、凄まじい相貌をして我自らをも疑るやうにおし黙りながら、まるで意識の伴はぬ空虚な動作で何かと辺りへ爪繰るやうな手を動かしたが、煮えたつ鍋にふと手を掛けてアッと叫びさま指を銜え、大袈裟に音けたたましく後退りした。
そして暫くジッとして煤けた壁に凭れたまま指をしやぶり、ボンヤリ鍋を視凝めてゐたが――駄夫はその目に姿のみえぬ泪があると想像した。