(そして瞿曇は斯るとき怒りの底に宝石のごとく悔ひと悲しみを深め養ふものである――)総江は殆んど訝かしげに、凄まじい相貌をして我自らをも疑るやうにおし黙りながら、まるで意識の伴はぬ空虚な動作で何かと辺りへ爪繰るやうな手を動かしたが、煮えたつ鍋にふと手を掛けてアッと叫びさま指を銜え、大袈裟に音けたたましく後退りした。
そして暫くジッとして煤けた壁に凭れたまま指をしやぶり、ボンヤリ鍋を視凝めてゐたが――駄夫はその目に姿のみえぬ泪があると想像した。
しかし駄夫はその感傷に格別心も動かさず、鍋と総江の間を抜けて麗かな戸外へ――井戸端へ立ち出でた。