その日、与里は勤めを休む筈にしてゐた。
いつたい与里の勤先(場末の映画常設館)はその伯父の経営にかかり、この伯父は与里の父には唯一人の兄弟であるが、かなり富裕な退職陸軍将校であつた。
この人は、落魄した与里の一家を憐れむよりは荷厄介にしてゐたので、与里達は何事につけても遠慮深く、他人以上によそよそしい気兼を働かせて、大概の病気にも休むことを差控へてゐた。
その日、与里は勤めを休む筈にしてゐた。
いつたい与里の勤先(場末の映画常設館)はその伯父の経営にかかり、この伯父は与里の父には唯一人の兄弟であるが、かなり富裕な退職陸軍将校であつた。
この人は、落魄した与里の一家を憐れむよりは荷厄介にしてゐたので、与里達は何事につけても遠慮深く、他人以上によそよそしい気兼を働かせて、大概の病気にも休むことを差控へてゐた。