この人は、落魄した与里の一家を憐れむよりは荷厄介にしてゐたので、与里達は何事につけても遠慮深く、他人以上によそよそしい気兼を働かせて、大概の病気にも休むことを差控へてゐた。
しかし此の日は流石に与里も休む心算にしてゐたらしい。
病める与里を二階へ残して、人々は階下で賑やかな食事を摂り、摂り了はつてから再び次ぎ次ぎに明るい二階へ集まると、やがて老婆が最後にひとり跫音もなく登つてきて、感動もない静かな顔で遥かな空に見入りながら「まあ結構なお天気……」と、言葉はさもさも恍惚として述べたけれども、さういふ言葉がやりきれないほど石碑のやうな顔付で、つづいて玄也の方へ孔のやうな視線をきりかへ