玄也は言つて、それから紅子に向ひ挨拶をうながすやうな――それは寧ろ懇願とさへ見られるやうな弱々しい態度で誘ひをかけたけれども、紅子は矢張り冷淡至極な、生真面目な、無表情な顔付をして、それとなくよそ見をするやうなふりをしてゐた。
まともに眺めたわけではないが、ひどく突きつめて何か一つを思ひ込んだといふ、神経的な蒼白さをビリビリと漂はしてゐた。
玄也は度胸をすえたらしく、今度はふてぶてしい無関心を装うて戸外へ立ち去らうとしたが、戸を締めやうとしかけてから矢張りまだ気掛りであるらしく、少しソワソワしたと思ふとその拍子にもはや怺へきれずに一時にドッと弱気になつてみぢめな相貌に凋み込んでしまひ、紅子を弱弱しく仰ぐやうにして、まるで拝むやうに