下では、六畳の片隅に紅子がゐて、たつた一人何やら思ひ耽つてゐたやうであつたが、駄夫の降りるのを見て「アアア――」何やらうるささうな様子でさう言つてふと立ち上り、さあらぬ態で、寧ろ人を食つたほど空々しい素振りをしながら、かなり荒々しい跫音で二階へ昇つて行つた。
昨夜の甚だ慎しみ深い此の女は、今朝は大した変りやうであるけれども、さういふことは駄夫にとつても頷けぬことはなかつた。
さういふ出来事があつてのち外出した駄夫は、この日道を行き乍ら若干の金が欲しいと考へられた。
下では、六畳の片隅に紅子がゐて、たつた一人何やら思ひ耽つてゐたやうであつたが、駄夫の降りるのを見て「アアア――」何やらうるささうな様子でさう言つてふと立ち上り、さあらぬ態で、寧ろ人を食つたほど空々しい素振りをしながら、かなり荒々しい跫音で二階へ昇つて行つた。
昨夜の甚だ慎しみ深い此の女は、今朝は大した変りやうであるけれども、さういふことは駄夫にとつても頷けぬことはなかつた。
さういふ出来事があつてのち外出した駄夫は、この日道を行き乍ら若干の金が欲しいと考へられた。