数杯の酒に男は忽ち赤黒くほてつた顔をして、江戸前のいなせな言葉に関西訛りのアクセントが時々絡みつくせつかちな口調で、心安く二人へ話しかけるのを聞いてみると、男は系図屋といふ不思議な商売を営んでゐた。
ケイズ……家代々の系図、万世一系の系、それあの系図さ、と男は怪訝な顔付をした駄夫に向つて細かく説明して、近頃自分は大変景気のいいことをムキになつて信じさせやうとした。
その話はどこまで信用していいものか分らないが、世間には系図に悩む人々が沢山あつて、斯んな便利重宝な機関があつたのかと狂喜して意外な礼金を投げ出す成金もあつたほどだと男は得意げに語つてきかせた。