「お隣りの娘なんざ顔を真赤にして喰ひつくやうに読んでたんぢやないか、へそくりで一冊でも買ふがいいや」と婆あは憎まれ口を叩いてゐたが、一番買ひたさうだつた一組の若夫婦、これが界隈で最もむさぼり読んだ口だが、やはり貧乏で買えなかつた。
この亭主はその後自作の物語を書きあげて長屋一帯へ廻してゐたが、なかなか名作が多かつた。
婆さんの蔵書は、結局駄夫の手でそつくり或る古本屋へ処分した。
「お隣りの娘なんざ顔を真赤にして喰ひつくやうに読んでたんぢやないか、へそくりで一冊でも買ふがいいや」と婆あは憎まれ口を叩いてゐたが、一番買ひたさうだつた一組の若夫婦、これが界隈で最もむさぼり読んだ口だが、やはり貧乏で買えなかつた。
この亭主はその後自作の物語を書きあげて長屋一帯へ廻してゐたが、なかなか名作が多かつた。
婆さんの蔵書は、結局駄夫の手でそつくり或る古本屋へ処分した。