駄夫が帰宅して二階へ登つた時に、与里の枕頭にゐた玄也は猫の顔付をツと持ち上げて、余り唐突な激しい意志のために、瞬間クラクラと仰反るやうなハヅミをつけたが、次の時には突然駄夫の胸に顔を押し当てて――彼はどういふ風変りなすばしこい動作をして駄夫の胸まで馳せ寄つたであらう?
――迸ばしるやうな叫びをあげて玄也は泣き出してゐた。
そして暫くの慟哭が続いたのち、辛くもシラブルをまとめることが出来るやうになると、自分はその朝の訪問にただ侮辱だけを伯父から報はれたこと、のみならず気を喪うほど打擲されたこと、自分の人生はもう暗闇で立直る見込さへ失はれてしまつたこと等を訴へたのであつた。