此家は広い畑の中に孤立した二軒長屋で、壁一重向ふ側には隣家も続いてゐるのだが、長いこと借り人がなくて畳には古い埃がつもつてゐる。
長いこと隣家の物音はないのであつた。
いつぞや、空家の孤独に浸り乍ら静かな昼寝を貪らうと思ひ、埃の中へ踏み込んでみたのであるが、空洞な部屋々々に立ち籠めた重い澱みは人の生気とそぐはない廃墟のやうな過去の死臭に満ちてゐて、睡むる気持にはなれなかつた。
此家は広い畑の中に孤立した二軒長屋で、壁一重向ふ側には隣家も続いてゐるのだが、長いこと借り人がなくて畳には古い埃がつもつてゐる。
長いこと隣家の物音はないのであつた。
いつぞや、空家の孤独に浸り乍ら静かな昼寝を貪らうと思ひ、埃の中へ踏み込んでみたのであるが、空洞な部屋々々に立ち籠めた重い澱みは人の生気とそぐはない廃墟のやうな過去の死臭に満ちてゐて、睡むる気持にはなれなかつた。