勿論、考へることは、何一つとして無いやうである。
斯うしてボンヤリしてゐると――私の下宿は坂の真下に当るうへに、深々とした欅の木立に取り囲まれてゐるので、夏の盛りであるといふのに終日陽射しを受けることなく、ジインと静まり返つてゐる。
気がつくと、坂下の街一杯に蝉の音が澱んでゐるのだ。
勿論、考へることは、何一つとして無いやうである。
斯うしてボンヤリしてゐると――私の下宿は坂の真下に当るうへに、深々とした欅の木立に取り囲まれてゐるので、夏の盛りであるといふのに終日陽射しを受けることなく、ジインと静まり返つてゐる。
気がつくと、坂下の街一杯に蝉の音が澱んでゐるのだ。