――私は、朝の洗面に、血痰に悩まされるのであつた。
そして私は、私の吐き出した物に対して、その幾分か不気味な、丁度栓を抜くやうに空虚な喉ざわりのほかには、決して特別の愛情も、扨て又特別の美意識も懐くわけではなかつたが、私は、一応洗面器を持ち上げて、吐き出した赤いチラチラするものを、流しの上に探し出さねばならなかつた。
そして又、私は、狼狽を隠すためではあるまいけれど、様々な別なことを考へやうとして、結局何事も思ひつかずに、ボンヤリと赤いものに眺め入つてゐるのであつた。
――私は、朝の洗面に、血痰に悩まされるのであつた。
そして私は、私の吐き出した物に対して、その幾分か不気味な、丁度栓を抜くやうに空虚な喉ざわりのほかには、決して特別の愛情も、扨て又特別の美意識も懐くわけではなかつたが、私は、一応洗面器を持ち上げて、吐き出した赤いチラチラするものを、流しの上に探し出さねばならなかつた。
そして又、私は、狼狽を隠すためではあるまいけれど、様々な別なことを考へやうとして、結局何事も思ひつかずに、ボンヤリと赤いものに眺め入つてゐるのであつた。