私は毎日、病院へ通ふのである。
灰色な、あの厳つい石門を潜つて、大きな建築の中に生命の見窄らしさを威嚇されたくない私は、そして、白い着物を着た、決して親愛を顔に出さうとしない人々から、邪魔者の(殆んど世の中にさへ――)のやうに眺められたくない私は、そして又、何物かの追求のために全く目まぐるしい活気に満ちた廊下を、あのベタベタと鳴るスリッパの世界を、脇見をしない白い人々の往来を、眺めたくない私は、(私はそれをそんなに強く怖れたわけではないだらう。
然し私は些少の嫌悪にも堪え難いから――)、斯うして私は、腕の確かな、しかし非常に平凡な、そして相当に貧乏な、(決して石の家には住まつてゐないところの――)、更に又、時々私がわけの分らぬ独語を思ひ余つて呟く時にも、きつと其の人はビックリして私の顔を凝視めながら、ぼやけた声で「何ですか――」と訊いてみて、自分の方で赤面してしまふやうな――私は、斯様に好人物なドクトルを、探し出すことが出来たのであつた。