不図した些細なハヅミに由つて、私の凭れる廻転椅子は、睡りのやうにユラユラと滑り出しさうになり、そして、白い空虚な部屋の中には、此処にも矢張りもんもんと滾る蝉の音が木魂してゐた。
扨て、一定の時間が来て、(朝の十時がその時である――)、愈々私は出発しなければならない時がくると、私は、出掛けるにはまだ少し早すぎる時間であると考へてみたり、何かしら満ち足りない気持がして、又暫くは窓に凭つて外の風景を眺めたり、懐を探つてみたり、そして静かに倒れ伏したりするのであつた。
すると、さういふ何かしら物騒がしい気配に由つて私の出発を感知した隣室では――