四十五円の収入から、先づ支出として七円の間代を支払ひ、充分に享楽して(彼の言葉によれば――)、扨て、尚かつ月々拾円の貯金を残すところの彼は、稀に見る勤倹精神の持主であつた。
何事にも細かな計算を忘れない彼は、例へば喜怒哀楽にも、歩きぶりにも、さては又、顔にも指にも、その計算を滲ませてゐた。
彼は夜毎に一日の支出を計算して、それに就ての精密な応答を取り換はすことを忘れなかつた。
四十五円の収入から、先づ支出として七円の間代を支払ひ、充分に享楽して(彼の言葉によれば――)、扨て、尚かつ月々拾円の貯金を残すところの彼は、稀に見る勤倹精神の持主であつた。
何事にも細かな計算を忘れない彼は、例へば喜怒哀楽にも、歩きぶりにも、さては又、顔にも指にも、その計算を滲ませてゐた。
彼は夜毎に一日の支出を計算して、それに就ての精密な応答を取り換はすことを忘れなかつた。